最近、「課金先のデザイン」がコンテンツにとって重要だなと思うことがよくある。コンテンツの人気を示す指標があまりに世の中に溢れてきたからだ。
昔は歌手ならCD売り上げ、テレビ番組なら視聴率…と決まっていたが、今はメディア自体が多くなってきた。ツイッターのフォロワー数、RT数、動画再生数、SHOWROOMのタワー本数etc…。
今、一番課金先がうまくデザインできてると思うコンテンツはVTuber(Virtual Youtuber)だ。
VTuberはやたらと課金額が高いことで度々話題に上がる。
少し前になるが、富士葵がクラウドファンディングで2000万円集めたこともあった。
タイアップイベントでグッズも出しているが正直ファン以外から見たらぼったくりだ。それでも売り切れて買えない人が続出するらしい。
VTuberは人気とはいえテレビに出ている芸能人に比べたら知名度も低いしファンも少ない。つまり、課金勢の割合が異常に高いか、一人あたりの課金額が異常に高いか、もしくはその両方かということになる。(この割合はちょっと気になっている)
ただ、どちらにしろここで一番重要な事実は、課金勢以外の人間に「VTuberってこんなに金集めてるんだ、すげぇ」と思わせることである。
ここが現時点でVTuberビジネスのすごいところなのだが、VTuberは基本的に動画投稿、もしくは配信がメインの活動になる。グッズまで出しているのはほんの一握り。基本的な活動は無料で追うことができる。逆に、推しに「応援している」という気持ちを伝えたくて仕方がないファン心理と、限界まで課金先を絞るというシステムの相乗効果で、特定のプラットフォームにものすごい額の課金が集まることになる。
運営側からしたら「うちのVTuberはこれだけお金を持って来れますよ」というエビデンスを示せるためタイアップの話を持ちかけやすくなり、さらにタイアップが決まったらファンは喜んでそっちに課金する、という流れも作れる。
コンテンツにとって、課金先は象徴とも言える。例えばAKBは総選挙投票券付きシングルがやたらと売れるけど、それは「これだけのファンがお金を出してこの子たちと握手したがる」「この子は総選挙でこれだけのお金を集めることができる」という証拠になる。
その一方、乃木坂46は総選挙は行わないため、AKBのようにシングルセールスが300万枚超えすることはないが、その代わりとして写真集という課金先を用意している。写真集が異常に売れることで、乃木坂のセールスポイントである「ルックス」を強調することができる。写真集は比較的ファン以外の目にも止まりやすいため、「一般人受け」を強調することもできる。
このように、現代の有象無象のコンテンツ産業を勝ち抜くためには課金先をうまくデザインする必要がある。というのがここ最近ぼんやりと考えていることである。
これからどんどん人気が出て芸能人化していくVTuberの収益バランスがどうなっていくのかがとても気になるのでウォッチしていきたい。