(ネタバレあり)アニメ「響け!ユーフォニアム」感想

1期から追っていたアニメ作品「響け!ユーフォニアム」が6月で完結した。主人公である黄前久美子の高校部活動生活3年間を描いた作品で、3年生の久美子がコンクールに挑む3期が終了したので、本編としては完結であろう。(原作小説では番外編となる短編集も出ているので、ボイスドラマやOVAはつくられる可能性がある。短編で好きな作品もたくさんあるのでぜひともお願いします…)

 

3期の12話で、「それまでなぞっていたはずの原作と真逆の展開になる」という斬新な手法が取られ、賛否両論が巻き起こったため、作品を見ていなくてもなんとなくこの騒動を知っている人もいるだろう。私はこの12話にひどく心を打たれてしまった。

というのも、響け!ユーフォニアムは久美子が1年生だった1期から一貫して「敗者を描く物語」であったことがこの話で明確になったからである。

特別な人、そうでない人

久美子の友人である高坂麗奈は部でも抜きん出た腕を持つトランペット奏者である。彼女は1期から「特別になりたい」ためにトランペットを吹くのだと豪語しており、実際麗奈は1〜3年まで誰にも負けることがなくコンクールメンバー・ソリストに選ばれ続け、高校卒業後も迷わず音楽の道に進む。

久美子は主人公らしく、作中で挫折と成長がたくさん描かれる。コンクール曲である難しいフレーズを吹きこなせずに顧問から本番では吹くなと言われたり、人間面でもいろんなトラブルにぶち当たったり、その度に成長していく姿が生き生きと描かれる。

しかし作品での大詰めである3年生の最後の全国大会のオーディション、演奏技術にも磨きがかかり、部長職もしっかりと勤め上げて後輩から「久美子先輩にソリを吹いてほしい」と言われるまでに人望を集めていた久美子は3年生から転校してきた黒江真由という、視聴者からしても作中のキャラからしてもぽっと出のキャラにソリストオーディションで負けてしまう。(原作では久美子がオーディションでソリに選ばれている、ここの展開で軽く炎上した。)

この黒江真由、ゲームチェンジャーとして非常に魅力的なキャラクターで、可愛くて非常に異性受けが良い(原作では明確にそう描写されている)上に、1期から見ている視聴者は「この子久美子の地雷をことごとく踏み抜いていくな…」というのがわかるように描写されている。

(ちなみに黒江真由にも彼女なりの事情があるのだ、私はずっと真由ちゃんを推しているのだ…)

私は響け!ユーフォニアムは「特別じゃない人(久美子)が特別になろうと努力したが、それを完全に諦めるまでの話」だと思った。

世の中には特別な人とそうでない人がいる、でも特別じゃない人にしか成し遂げられないことがあるんだよ、というメッセージを受け取った。それがラストの久美子が「教師になる」という道なんだと思う。

例えば完璧主義で共感性が低い、ドラムメジャーで散々人間関係の問題を起こした麗奈が高校の顧問になったらまあ大変なことになるのは容易に想像できる。3年間あらゆる壁にぶち当たりながら努力してなお最後に報われなかった久美子の経験は教師になるにあたって代えがたい糧になるはずだ。久美子たちの顧問である滝先生が折に触れて本音で対話する相手が麗奈ではなく久美子なのも、そういった素質を見抜いていたからではないか。

ユーフォはその展開のリアルさやシビアさから地獄と言われることが多いのだけど、このラストを見て私は世の中のほとんどを占めている、「特別じゃない人たち」を救うとても優しい物語だなと思った。

描かれたいろんな形の敗北

1〜3年生編で久美子に限らず、いろんなかたちの敗北が描かれてきた作品だと思う。

3年生でいきなり部の方針が実力主義に変わったせいでソロを麗奈に奪われた香織(いやあこのときはまさか久美子の伏線だったとは思わなかった…)、

すべての後輩より実力が劣っていたけど自分なりにできる道を切り開いていった夏紀、

自分が音楽に誘った友人がその抜きん出た才能により手の届かないところまで行ってしまった希美、

大好きな先輩の最後の大会メンバーに選ばれなかった奏(これも真由がいなかったら出れてたんだよな…)。

#その中で唯一王道サクセスストーリーを歩んでいるのが葉月なんですが、いや葉月めっちゃすごいよね、高校から始めたのに全国大会メンバーなんだよ…?もっとフィーチャーされてもいいのよ?

解釈が分かれるのは承知の上で言うけど、私はあすかも「特別ではない人」の方だと思っていて、理由としてはユーフォの世界では特別な人(みぞれ、麗奈)は音楽の道に進んでいるから。現実世界では必ずしも音大こそ特別、と言うわけではないけど、ユーフォの世界ではそこで線引きがされている気がする。

あすかは久美子はじめ北宇治のメンバーにとっては特別な人だったと思うけど、本人はそうじゃないと自覚していたんじゃないかな。もしくは素質はあったけど本人がそうじゃないと思いこんで自ら扉を閉ざしてしまったとも言えるかも。ここはいろんな人の意見を聞いてみたいところ。

でも、当然だけど音楽が好きだからと言って音楽の道に進むことだけが人生ではないし、それぞれ自分の特性からなにかを見出して活かす道を探していくしかない。ときたま出てきたOGの明るい顔がそれを表現しているんじゃないのかな、と思った。

(ちなみに黒江真由はどっちの立場なのか最後までよく分からなかった。実力的には十分音大行けそうだけど本人にその気はなさそうだしな。ユーフォの中では異質な存在として扱われているので、そのよくわからなさも黒江真由のアイデンティティに一役買っているのかもしれない。)

久美子と真由の実力は本当に拮抗していたのか

最後にこれも賛否分かれそうな話なんだけど、私は「久美子は実力で完全に真由に負けていた」と解釈している。というのも久美子は3年間積み重ねてきた人間関係や後輩との信頼関係があり、部内でも「久美子先輩と麗奈先輩にソリを吹いてほしい」と言われる描写があった。一方で真由は「(実力を考えると)真由ちゃんが選ばれることもあるかなと思った」とは言われているものの「真由ちゃんに絶対吹いてほしい」とは言われていない。(転校生だしね…真由ほど転校生の悲哀を背負ったキャラもそうそういない)

その状態で久美子と真由がブラインド審査で一票差になっている時点で北宇治の判断は真由>久美子なんじゃないかな、と思いました。どちらも全国大会ソリを務め上げられるラインは超えている、という前提だけれども。

12話のオーディションシーンは何回か見返したのだけど、1箇所だけ久美子は音がひっくり返りそうになっているところがあり(その瞬間麗奈の顔がアップになるので意図的に演出されているのであろう)、欠点を全く感じさせなかった真由がコンクールでは選ばれるのは納得だなあと思ったのでした。久美子のほうがエモーショナルに吹いていたから、文化祭や演奏会なら向いているけどね。

 

ということで珍しく感想を長々と書きました。何度も言うけど短編集も良い話が本当にたくさんあるので、アニメかボイスドラマ化お願いします!

あと私は剣崎梨々花ちゃんが好きなので、久美子たちが卒業したあとの北宇治も何かしらの形で描いてくれると嬉しいです!