新規事業やらイノベーションやらで削られている人は朝ドラ「まんぷく」を見よう

久しぶりに朝ドラを毎日見ている。安藤サクラ長谷川博己といった演技に定評のあるキャストが繰り広げる人間ドラマ、と思いきや2週間に1度イノベーションが起きる超展開ビジネスマン向けドラマなのである。

 

(以下11/10放送分までの内容を含むのでネタバレが嫌な方はここでブラウザバックしてください)

 

 

 

 

 

主人公、今井福子(安藤サクラ)の夫である立花萬平(長谷川博己)は発明家。根菜切断機(今でいうフードプロセッサー)の開発に勤しんでいたが、戦争でそれどころでなくなってしまう。戦争が終わり、萬平含む福子の家族たちは貧困に陥るが、困っているのは福子たちだけではなかった。戦争で家を失った人達は身分を証明するものがなく、配給を受けられない人も現れる。さらに闇市ではとんでもない値段でものがやり取りされる。

そこで萬平が思いついたのは「身分を証明するもの=はんこ」を作って売ることである。これが大繁盛。客が押し寄せ、ハンコによって安定したもののやりとりが実現される。福子たちも大忙し、家計は一気に潤う。

 

ところがそう長くは続かない。ハンコを彫ることは特別なスキルではないため、同じことをやる人たちが多く現れ、お客を奪われてしまう。家計は一気に苦しくなり、萬平、福子、鈴(福子の母)の3人は福子の姉の家に居候するのをやめ、3人で泉大津に引っ越す。

職を探す萬平たちは、行きつけのラーメン屋のスープの味が変わってしまったことに気づく。店長曰く、塩の配給が減り、闇市で高額取引されるようになったため手に入らなくなったとのこと。新居が海の側であったことと、使われなくなった大量の鉄板が置いてあったことから萬平は塩の製造業を立ち上げることを決意。塩の量産は力仕事になるため戦争で家族も職も失った男達を住み込み、食事付きで働かせる・・・というのが現在放送中のお話。

 

歴史に残る創業者である安藤百福氏がモデルになっているから当然とも言えるが、まんぷくには新規事業に必要なことがたくさん描かれている。私は大きく以下の3つだと思う。

1. 顧客の必要なものを見極めること

2. 今まで自分がやって来たことに囚われないこと

ハンコ屋も塩製造も、萬平がそれまでやってきたこととは全く関係がない。萬平がそのとき、世間を見て必要だと思ったことを愚直にやる。そして、実現できたときは萬平が助けたいと思った人達がちゃんと笑顔になっている上に、萬平たちの家計も潤う(このドラマでは主に献立が家計の象徴として描かれるのも良いと思う)。

「人を助けて、利益を得る」これは一見当然のことであるが、現代の、特に大企業で新規事業を起こそうとしてもなかなかうまく行かない。その障壁を超えるために必要なのが次の要素。

 

3. 肯定し続ける人がそばにいること

福子は常に萬平を信じ、支え続ける。ドラマでは理想の妻として描かれているが、私は福子はむしろ「理想の上司」であると思う。福子がいなければ萬平がこれだけ生き生きと人を助け続け、のちに大成功を収めることは不可能であると思う。新規事業を応援する立場にある人(例えば上司とか同じチームのメンバーとか)は、福子の発言や行動を参考にするときっとうまくいくのではと思う。

ちなみに福子の母である鈴は萬平に常に否定的なポジションを取っており、「なんで私がこんなことやらないといけないの?」「塩屋なんて嫌!」といった発言が頻繁に見られる。ビジネス的な見方をすると、姑というよりは大企業の決裁者のように見える。

 

新規事業は、意地悪な人がいるわけではなくとも、それぞれが会社や事業を守ろうとした結果、無駄な衝突が起きてしまうことが多い。まんぷくは主人公達が、苦労もしつつ、純粋な思いで周囲を巻き込み、次々と新規事業の壁を突破していくところが見ていてとても気持ちいい。これからも毎日楽しみに見ようと思うし、新規事業やらイノベーションやらで身を削られている人にはぜひ見て欲しいドラマである。